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Idle talk 2
2007-02-08 12:25
こんにちは、ホワイトです。

はい、とうとう大記録打ち立てちゃいましたね。
遂に月一更新(´゚ω゚).;・:

はい、もう、ほんとすんません_○_∩_=3
(;゚Д゚)ノシ いやでもね、いろいろ理由が重なってですね!?

順番にいきますと、今回は小説第二作です。
第一作を昨年の1/28に公開してたので、第二作も1/28に公開しようと思って書いてたら・・・間に合わなかった_| ̄|Σ;・,';--==≡≡○
そんな感じでやってたら、2倍期間に突入しちゃいまして・・・更新する時間なくなった_| ̄|Σ;・,';--==≡≡○
で、ようやく今日更新というわけです。
ほんとすいません。

そんなわけで、ネタ日記期待されてた方には申し訳ないんですが、グダグダ小説第二段です。
本当は昨年中に二、三作書くつもりだったんですが・・・無理でしたヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ
前作の続編ではなく、短編読み切りです。
とはいっても、前作の倍くらい長いですがorz

例によってグダグダです。
結構慌てて書いた所もあるので、まだまだ完成度は低いんですが・・・もう公開でいいや(゚∀゚)メンドイ
細かい部分は、少しづつ手直ししていきたいと思います。
体の毒にならない程度にお読み下さい。
服用中に体に異常が見られたときは、ただちに使用をおやめ下さい。
 


彼の部屋の花瓶は、花で溢れかえっていた。
窓辺に置かれた花瓶からは、色とりどりの花が花弁を広げている。
だがそれは、美しく飾り付けられているというよりは、別々の花を、ただごた混ぜにして花瓶に挿しているという感じだ。
そこに、美術的な要素を感じることは難しい。
しかし、その統一性のない花々は、お世辞にも整理されているとは言い難いその部屋と、奇妙にマッチしているとも言えた。


開け放たれた窓から吹き込んだ風は、花たちの体を揺らし、その香りを部屋の中へと運んでいった。







■風の薫





その青年は、路地裏で一人、ブツブツと呟いていた。
多くの商人たちで賑う南大通りから、少しだけ奥へと入ったそこで、右往左往しながら何かを考え込んでいる。
はたから見れば不審者とも見られかねない状態だったが、周りにそういった様子で見るものはいなかった。
それはどうやら、その出で立ちのお陰のようだ。
頑強で重厚な鎧、腰に下げられた剣、そして、神への忠誠を誓う証となる十字架。その姿は、王国騎士団のクルセイダーのそれだった。

「・・・いや、でもこれじゃ不自然だしな・・・じゃあやっぱりいつもみたいに・・・いやいや、もう何回も来てるんだしそれもおかしいか・・・ブツブツ」

もう何度目になるのだろうか。
巡回中に見かけた花売りの少女に一目で心を奪われ、彼女の元に足を運ぶようになって、随分と日が経っていた。
何かしら話をしようとするも、緊張のせいでうまく話ができずに、買いに来たわけでもない花を買って帰るだけの日々。
部屋の花瓶には、もう花を挿す隙間も少なかった。

入団することが非常に難しいルーンミッドガッツ王国騎士団において、彼ほどの若さで正式な騎士となることができる例は極めて稀である。
それは、ひとえに彼の努力の賜物だった。
少年時代から騎士団入団を夢見てきた彼は、ただひたすらに剣の修練と勉学に励んでいた。
そのお陰で、剣士時代から同期の者達より頭一つ抜きん出ていた彼は、その後順当にクルセイダー転職試験に合格し、王国騎士団の一員となった。
それゆえに、将来は騎士団を背負う優秀なクルセイダーになると、周囲からの期待も大きかった。

しかし、そんな彼にも苦手な分野というものがあった。
というより、ひたすらに騎士団を目指して日々を過ごしてきた彼だからこその弱点だった。
今日もまた、その弱点のために、彼は頭を抱えていた。

「もう顔くらいは覚えてくれただろうし、そろそろ自然に・・・ブツブツ」
相変わらず、何か呟きながらあたりをウロウロと歩き回っている。
と、その時、彼の顔がパッと明るくなった。何か妙案を思いついたようだ。
「やっぱり最初は花の話題からだよな。
『綺麗な花ですね、お嬢さん』
『フフ、ありがとうございます』
『でも、貴女の方がもっと綺麗ですよ』
『そんな・・・恥ずかしい・・・(ポッ)』
・・・これだ!!」
彼は、拳をグッと握った。
我ながら素晴しい作戦だ。これならいける!
彼は勝利を確信した様子で、その場所へと歩を進めた。

しかし、その確信も、いざ彼女の元へと近づいていくにつれて、徐々に不安へと変わっていく。
そして、勢いで歩いていた彼は、確信が完全に不安へと変わったところで、彼女の元へとたどり着いた。

「あ、こんにちは」
花売りの少女は、彼に微笑んだ。
「あ、あああ、こ、こんにちは・・・」
通常ならありえないぎこちなさで、彼は返事をした。
「いつもありがとうございます。今日はどの子にされますか?」
彼女は、腕に下げられた籠の中の花達を見て言った。
(い、今だろ・・・は、早くさっきの作戦を・・・!)
彼は必死に先ほど思いついた妙案を実行に移そうとする。
しかし、緊張のあまりセリフがうまく喋れない。
そもそも、そんな作戦を実行できるくらいなら、すでに普通に会話ができているはずである。
それにすら気づけないほどに、彼は動転している。

「き、ききききれ・・・」
「・・・きれ?」
少女は首をかしげた。
だめだ。このままでは、いつも通り適当に見繕ってもらった花を買って終わってしまう・・・!
青年を、再び絶望が包んだ。

しかし、そこで思いもしないことが起こった。
なにやらブツブツと呻いている彼を、しばらくいぶかしげに見ていた少女が、突然口を開いたのだ。
「あの・・・カイツさん・・・ですよね?」
彼は「口から心臓が飛び出る」という現象を、初めて体験しそうになった。そのまったく予想だにしなかった展開に、目を白黒させている。
「え・・・な、何で俺の名前・・・?え・・・え、と・・・えええ?」

カイツ・アルフェイン。
それが彼の名前だ。
しかし、なぜ彼女は自分の名前を知っているのか。まだ自分の名前を教えてはいない。
自分が忘れてしまっただけで、以前会った事があるのだろうか。
必死に思い出そうとするが、気が動転してそれすらもままならない。
更に輪をかけて彼は混乱していく。
そこに、彼女が話を続けた。
「先日、騎士団の方々が近くを通られた時にあなたを見つけて・・・。その時に、リーダーの方にあなたが怒鳴られていたのを聞いたもので・・・」
そういって、彼女はクスッと笑った。

・・・思い出した。
数日前、モンスターの討伐に向かった帰りのことだろう。
まだ騎士として経験の浅い新人の彼は、討伐の疲れでフラフラになり、師団の最後方でヨロヨロと歩いていたのだ。
それを見た師団長に
「どうしたカイツ!この程度でへばっていては騎士など務まらんぞ!!」
そう怒鳴られたのだ。

穴があったら入りたかった。
どうして、よりによってそんなみっともない所を見られてしまったのか・・・。
せめて帰りではなく、討伐に向かうところだったら、まだしっかりとしていたのだが。
彼は、はぁ・・・とため息をついた。

「なんかみっともないとこ見られちゃったみたいだね・・・」
落ち込む彼に、少女は声をかけた。
「そんなことありませんよ。あんなにクタクタになるまで頑張ってらっしゃるんですから、素晴しいことですよ」
そういって励ましてくれる。
嬉しいような、情けないような、複雑な感情だった。
だがその時、本人も気づいてはいなかったが、それまでガチガチだった彼の緊張はすっかり解れていた。
「じゃあ、もう名前知ってるみたいだけど、あらためて自己紹介するね。俺は、カイツ・アルフェイン。ルーンミッドガッツ王国騎士団第四師団クルセイダー部隊に所属してる。よろしくね・・・えっと・・・」
言葉に詰まった彼に、花売りの少女が言葉を続けた。
「シェリー、シェリー・スミスです。よろしくお願いしますね、カイツさん」
そういうと、にっこりと微笑んだ。

彼は天にも昇る気持ちだった。
気を抜けば、際限なく表情が緩んでしまいそうだった。
だが、彼女の前でニヤニヤしていては気味が悪く思われるだろう。
彼は必死ににやけそうになるのをこらえた。
しかし、緩む表情をこらえて強張ったその顔も、気味悪く思われても仕方のないものだと、彼は気づいていない。

「カイツさん、お花好きなんですね」
籠の中の花を見ながら、シェリーが嬉しそうに言った。
「あ、うん、そ、そうだね。」
ぎこちなく答える。本当は花じゃなくて君が・・・と頭をよぎったが、そんなことは言えるわけもない。
「私もお花、大好きなんです。皆それぞれ、思い思いの色で体を広げて、優しい香りを振りまいて、私たちに安らぎをくれる・・・。」
そう話しているその顔は、本当に嬉しそうである。
その表情は、あぁ、この娘は花のことが心から好きなんだな・・・と、直に感じることができる。見ている者にもその安らぎが伝わってくる。
それは、彼女から初めて花を買った日から変わらない。
そしてそれが、カイツが彼女に感じている魅力なのだろう。
にやけて緩んでいた顔が、自然な微笑へと変わっていく。

と、その時、突然、聞いた事のある怒鳴り声が響いた。
「カーイツ!何を道草くってるんだ!!」
カイツの体がビクッと震えた。
師団長だ。カイツの顔がさぁーっと青ざめていく。
「やっべ・・・」
彼の顔には冷や汗が浮かんでいる。
「ご、ごめん!じゃあ、俺もう行くね!」
彼は慌しく走っていく。シェリーは驚いていたが、状況を理解すると、微笑みながら小さく手を振ってくれた。
カイツも、走りながら何度も後ろを振り返り手を振った。

そして、彼女の前で二度目の『みっともない所』を見せることとなった。

その日、彼の表情は緩んだままだった。
訓練中もそれは変わらず、師団長の怒声ばかりが飛んだ。
何度怒鳴られたのか、もはや覚えていない。
何度怒鳴られても、表情が緩んでしまう。
頭の中は、シェリーのことでいっぱいだった。

その結果、彼は一人で宿舎の掃除をする罰を受けることとなった。
当然、掃除をしながらもその表情は締まりのないままだった。

それから、彼女の元へと足を運ぶのが彼の日課となった。
ただ何気ない話をするだけだったが、それだけでも彼の日常は、まさに花が咲いたように彩のあるものになった。
毎日訪れるカイツに嫌な表情をする事もなく、シェリーも話に付き合ってくれる。
おそらく、彼女自身も彼との会話を楽しんでいるのだろう。
カイツにも、以前のようなぎこちなさはなく、とても自然で和やかな時間だった。

同時に、彼の宿舎掃除も、ほぼ日課となっていった。


そんなある日、シェリーがあることを彼に尋ねた。

「そういえば、カイツさんはどうして騎士になろうと思ったんですか?」

少年時代から騎士を目指していたのは聞いていた。
だが、その理由については彼女はまだ聞いたことがなかった。
「あぁ、まだ話してなかったね。・・・俺、昔騎士団の騎士に命を救われたことがあってね・・・」
カイツは、彼の騎士道の根幹となる出来事を話し始めた。


数年前、彼はまだ騎士というものには何の興味も持ってはいなかった。
友人たちと遊びまわることで毎日を面白おかしく過ごしていたし、その生活を楽しんでいた。
決してだらしのない生活を送っていたわけではなかったが、未来に目標や夢を持っていたわけでもなかった。

その日、彼は街の南で、一人釣り糸を垂らしていた。
晴れ渡る空とぽかぽかとした陽気。隣ではペットのポリンが、ぽよんぽよん、とその体を揺らしている。
のどかな昼下がりだった。
「くぁぁ・・・」
自然とあくびが出てくる。
脇に置かれたバケツの中には、獲物は一匹も見られない。
もっとも、単に時間つぶしをしているようなものだ。釣れないからといって悲観する必要も無い。
だが、さすがにこうも獲物がかからないと・・・
うとうとと眠気に襲われた彼は、その場にごろん、と仰向けに寝転んだ。
視線の先には、遮るものが何一つない青空が広がっている。
「ポリーン、あんまり遠く行くなよー」
近くからは、相変わらず「ぽよんぽよん」とのどかな音が聞こえてくる。
ぼーっと寝転んでいるうちに、徐々にまぶたが重くなっていく。
彼の意識が途切れ途切れになっていった。

その時、彼の頭上に黒い影がかかった。
(ん・・・、雲でも出てきたのか・・・?)
彼は閉じかけたまぶたを開いた。
しかし、そこにあったのは、雲などではなかった。
何か巨大な、人のようなシルエット。
しかし、その大きさは、人間というにはあまりに不自然で・・・
そう思っているうちに、その影が何かを彼に向かって振り下ろした。
「――――っ!」
彼はとっさに横に転がってそれを避けた。
ドスン!!
つい今まで彼が寝転んでいたそこに、巨大な槌が叩きつけられた。
地面を這うようにして彼はそこから離れる。
そして、その槌の持ち主を見て絶句した。
巨大な体。
人間くらいの大きさはあろうかという槌。
そして、牛のような頭部。
それは西の都市、モロクにあるピラミッドに生息するといわれている牛の怪物――

「ミ・・・ミノタウロス・・・!?」

彼は後ずさりした。
立ち上がって逃げようとしたが、恐怖で膝が笑い、立ち上がることができない。
奥歯がガチガチと音を立てた。
必死に逃げようと這っていくが、牛の怪物は、置いてあるバケツを蹴飛ばしてずんずんと近づいてくる。
怪物の後方には、元はポリンと呼ばれていた家族の、無残に変わり果てた姿があった。
「ポ、ポリン・・・!」
すぐにでも駆け寄りたかったが、目の前に迫る恐怖のせいで、それすらもできない。
もはやその場から動くことさえもできない。
とうとう怪物の攻撃範囲まで彼は追いつかれてしまう。
ミノタウロスは、もう一度槌を振り上げた。
(あぁ、俺はここで死ぬんだな・・・)
恐怖で気が狂いそうになっているはずの彼の中に、恐ろしいまでに冷静な結論が浮かぶ。
彼はきつく目を閉じた。

そして、辺りに叫び声が響いた。

「グゥォォォォオオオオオオ!!!」
だがそれは、人の発する音とは似ても似つかないものだ。
(あれ・・・俺ってこんなにいかつい声してたっけかな・・・)
そんな事を考えて、ゆっくりと目を開いた。
すると、目の前にいたはずの巨体は随分と小さくなっていた。
見上げるほど大きかったはずのその体は、半分程度にまで縮んでいる。
いや、これは先ほどの怪物ではない。人間だ。
その背中では、真紅のマントが風になびいている。
右手には剣が持たれ、体にはガッチリとした鎧。
その人物が、王国騎士団のクルセイダーだと気づくのに、そう時間はかからなかった。
そしてそのクルセイダーの前方には、先ほどまでこの場を支配していた怪物が、叫び声を上げて苦しんでいる。
よく見ると、その怪物の両腕の、肘から先が消失していた。
辺りを見回すと、柄の部分から2本の腕を生やした槌が、地面に転がっている。
切断されたのだ。突如現れたクルセイダーの剣によって。
両腕を失った怪物は、その怒りに任せて騎士に向かって突進しようとした。
だが、その体が動き出す前に、その腹部に刃が突き立てられていた。
怪物の口から血がこぼれ落ちる。
そして、騎士がその突き立てた剣をそのまま縦に振り上げると、切り裂かれた体からは血がほとばしり、切り裂いた剣を赤く染めた。
その場の勝者は、火を見るよりも明らかだった。
ミノタウロスは地面に倒れ付すと、周りに血溜まりを作り、その生命活動を終えた。
カイツはその様子を、ぽかんと口を開けて見ている。

その彼の元へ、戦いを終えたクルセイダーがやってきた。
整った顔立ちをしたその男は、あの怪物を相手にしたというのに、涼しい顔をしている。その若さにしては、かなりの腕のようだ。
「大丈夫かい?怪我は?」
スッとその右手を差し出した。カイツは、その手を握り、立ち上がらせてもらう。
「あ、だ、大丈夫で・・す・・・」
体はまだ恐怖で震えている。
男はその肩を両手でぐっと掴むと、震える少年の目を見て優しく微笑んだ。
「もう大丈夫だ、心配ない。家まで送っていこう」
そう言うと、落ちている釣竿とへこんだバケツを拾い上げると、彼の手を引いて歩き出した。
「ここのところ、王国全土で原因不明のモンスターの出没が相次いでいるんだ。さっきのミノタウロスもそれに関係あるんだろう。今回は偶然僕が見回りをしてたからよかったけど、君も気をつけないとな。」
などと説明をしてくれたが、カイツは聞いているのかいないのか、下を見たままブルブルと震えているだけだった。その目には、涙が浮かんでいる。
恐怖による涙か、愛するペットを失った悲しさによる涙か、はたまた己の不甲斐なさを悔やむ涙か。
その後、彼は自宅まで送り届けられ、その騎士と別れた。
母親が何度も頭を下げて礼を言っていたが、その間も、彼はただ、うつむいているだけだった。

数日後、彼は見習い剣士として、その一歩を歩み始めた。


「ってことなんだ・・・」
カイツは話を終えると、空を仰いだ。
「そうだったんですか・・・」
話を聞いていたシェリーも、彼の視線を追って空を見上げた。

そう、今の自分はあの日を出発点にして生きている。
そして、騎士団入団という最初の関門はクリアした。
次は更にその上の目標を追わなくてはならない。
彼を窮地から救った騎士のいる高みを――。
「騎士団にはなんとか入れたから、次の目標は第六師団に選ばれることなんだ」
空を見上げたまま、カイツは再び話し始めた。
「第六師団・・・ですか?」
シェリーは首をかしげた。

ルーンミッドガッツ王国騎士団第六師団。
厳しい訓練と試験をくぐり抜けた者のみが入る事を許される王国騎士団で、その中から選び抜かれた精鋭で構成された師団。それが第六師団だ。
それゆえに、こと戦闘力においては他の師団を圧倒しており、通常の騎士団員では手に負えないような、強力なモンスターの討伐などを主任務としていた。
かつてカイツを救った騎士もその一員であり、彼の羽織った真紅のマントは、第六師団の者のみが羽織る事を許された、いわば勲章のようなものだった。
全ての騎士達にとって、その真紅のマントを羽織ることは最高の名誉の一つであり、常に目指すべき頂でもあった。
そして、その強さゆえ、彼等の剣は常に敵の血で赤く染まっているといわれ、敬意と畏怖の念を込めて『クリムゾン・ブレイド(真紅の剣)』と呼ばれていた。

カイツが、名前すらわからないあの日の騎士を目指し、そして越えるためには、第六師団に選ばれることは絶対条件なのだ。
まだ先は長く険しいが、彼に迷いは一切なかった。
その頂を目指す彼の顔には、強い決意と、揺ぎない意思が感じられた。
隣でその横顔を見ていたシェリーの胸が、とくん、と高鳴った。
彼女もそれを自覚したのか、それまで彼に感じた事のない感情に戸惑っているようだ。
それを見て、今度はカイツが首をかしげた。
「どうしたの?」
覗き込むようにしてシェリーの顔を見る。
「い、いえ、なんでもないですよ・・・」
そう言うと、彼女は恥ずかしそうに顔を背けた。
「?」
カイツはきょとんとした顔をしている。
その彼女の反応が、何を意味しているのかサッパリわからないという顔だ。
デリカシーがないというレベルではなく、本当にわからないのだろう。
彼らしいといえば彼らしい反応だった。

それぞれの理由で、しばらくの間沈黙が続いた。
すると突然、カイツが大声を上げた。
「ああああああああっ!!!」
顔を背けていたシェリーも、ビクッとしてカイツの顔を見る。
その顔は、真っ青になっている。
「ど、どうしたんですか?」
おずおずと尋ねると、震えた声で彼が答えた。
「訓練もう始まってる・・・」
震える指で、街角に立てられた時計を指差した。
その時計の示した時刻は、シェリーには特に意味のあるものではなかったが、カイツには絶望的なものだったようだ。
「ご、ごめん!それじゃまたっ!!」
いつぞやのように、彼は慌しく走り出した。
ぽかん、とそれを見ていたシェリーは、「フフッ」と笑うと
「いってらっしゃい。頑張ってくださいね」
と小さく手を振った。

二人が見上げた空は、突き抜けるように青く、澄んでいた。





第四師団の宿舎では、師団長の声が響いていた。
「今日の建国祭では、我々第四師団は有事の際に備えて待機となる。城下町および大聖堂の警備、そして国王の護衛にはそれぞれ他の師団が当たる。いずれかで問題が発生した場合は、我々第四師団が援軍として向かう。何時如何なる時も即座に対応できるよう、準備を怠るな!以上!!」
「ハッッ!!!」
その掛け声を合図に、それぞれが鎧を身につけ始めた。
今日は、ルーンミッドガッツ王国の建国祭という、特別な日だ。
首都プロンテラでは街を上げて祭が行われ、普段は城で執務を行う国王も、この日だけは祝典のために大聖堂まで足を運ぶ。
そのために、街は騎士団によって警備がなされる。
特に、国王が訪れる大聖堂は、かの第六師団によって警備されるため、物々しい雰囲気となることだろう。

その後、建国祭は問題もなく、順調に正午までの祭典を終えた。

後は、大聖堂での国王参加の祝典を残すのみだ。
それについても、現在進行中のはずである。
待機していた第四師団でも、このまま無事に終わるだろうと皆が思っていた。
部屋の中で同僚と話をしていたカイツもそれは同様だった。
「なぁ、カイツ、例の花売りの娘、どうなったんだよ?」
その友人は、うひひ、と下品な笑いを浮かべた。
「どうって・・・」
カイツは回答に困って口ごもった。
「お前、ここんとこ毎日あの娘のとこに行ってるだろ?そろそろ何か進展あってもいいんじゃないのか?ええ?」
ニヤニヤと、肘でカイツの胸をつついてくる。
「いや、それはな・・・えー・・・」
相変わらずモゴモゴと口ごもる。
その間にも友人は「どうなんだ?あぁん?」と、実に楽しそうに彼に詰め寄っている。

そんな、どこかのどかな空気が流れていた宿舎に、突然師団長が駆け込んできた。
バンッ!と扉を思い切り開けると、怒鳴り声にも似た声で話し出した。
その場が、一気に緊張した空気に包まれた。
「全員静粛に!たった今、プロンテラ市街地南部に多数のモンスターが出現したとの報告があった!!現在それぞれの師団が対応している!!我々第四師団は、大聖堂で国王及び要人の護衛の援護を行う!!ただちに大聖堂に向かうぞ!!!」
「ハッッ!!」
皆が慌しく動き出した。
それまでカイツをからかっていた同僚も、その顔にさっきまでのふざけた雰囲気は欠片もない。
剣と盾を持つと、ガシャガシャと鎧を鳴らして走り出す。カイツも慌てて剣を持つと彼の後を追った。
だが、カイツには気になることがあった。
今、師団長は市街地南部と言った。
具体的な場所まで推測することはできないが、いつもシェリーが花を売っている場所も街の南部に当たるだろう。
彼の心に不安が生まれる。
シェリーがモンスターに襲われていたら・・・。
彼の心拍数が上昇していく。
だが、自分に下された命令は、大聖堂の国王の護衛である。
それを無視してシェリーの元へ向かうのか?
それに、街の警備には他の師団が当たっているはずだ。自分が行かなくとも、彼等が人々を守ることだろう。
命令違反は重罪だ。
おそらく、騎士団永久追放は免れない。
騎士団は彼の夢であり、目標であり、そして、もはや生き甲斐だ。
彼女の元に向かうことは、それらを全て棄てることと同義だろう。
カイツは、迷っていた。

彼の前方からは、師団長の怒鳴り声が聞こえてくる。
彼には、多くの時間は残されていなかった。
決断は、今しかなかった。

「もうしわけありませんっ!!!」
そう叫ぶと、カイツは皆が走っていく方向とは別の方向に走り出した。
再び師団長の怒鳴り声が聞こえてきたが、すでに彼の耳には届かなかった。
彼は、彼女の元へと息をせき切って走った。

彼女が無事にそこにいれば、それならばそれが一番いい。
彼女がそこにいなければ、すでに避難したということだ。それも問題ないだろう。
だが、もし・・・

大通りのほうからは、悲鳴、怒声などが聞こえてくる。
不安を振り払うようにぶんぶんと首を振ると、彼は建物の角を曲がった。
そして、その場所へとたどり着いた。

そこに彼女の姿はない。
代わりに、彼の眼前にはある者が立っていた。
その姿は、異形の物だった。
巨大な体。
人間くらいの大きさはあろうかという槌。
そして、牛のような頭部。
「ミ、ミノタウロス・・・!」
かつて彼を襲った脅威が、再び彼の前に立ちふさがっていた。
彼を再び大きな恐怖が襲った。
体中が恐怖で悲鳴を上げた。

恐怖と共に、彼の中に絶望が生まれる。
(コイツがここにいるということは・・・、シェリーは、シェリーは無事なのか!?)
目の前の怪物に警戒しつつも、辺りに彼女の姿を探す。
すると、ミノタウロスの後部、少し離れた所に彼女はいた。
しかし、彼女はその場に倒れている。
「シェリー!」
何度も名前を叫んだが、反応はない。
考えたくはなかったが、状況から見て、この怪物が彼女に危害を加えたということは安易に予想ができた。
一刻も早く彼女の安否を確認し、措置をとらなくてはならない。
そのためには、立ちふさがるミノタウロスを排除する必要があった。
腹をくくるしかなかった。

「き、きやがれ・・・っ!」
恐怖でガチガチと音を立てる奥歯を食いしばり、震えを無理矢理押さえ込むと、彼は剣を構えた。
相手はあの巨体だ。パワーではかなうはずも無いが、スピードならこちらに分があるはず。そこを突くしかない。
彼はミノタウロスに向かって走り出した。
ミノタウロスも、それに合わせて巨大な槌を振り上げる。しかし、その動きは予想通り緩慢だ。
彼に向かって振り下ろされた攻撃をひらりとかわすと、武器を振り下ろしたことにより低く下がった頭部に向かい、剣を振り上げた。
(もらった!)
頭部への一撃を確信した彼は、思い切り剣を振り下ろした。
しかし、その刃がモンスターにたどり着く前に、彼は横からの凄まじい衝撃に吹き飛ばされた。
「・・・ガッハ・・・ッ!」
そして、そのまま建物の壁へと叩きつけられた。壁に張り付けられたまま、ズルズルと地面に崩れていく。
何が起きたのか。槌による一撃は完全にかわしたはずだ。
だが、この衝撃、受けた感触は、殴る蹴るなどの四肢を使った攻撃ではない。おそらく、振り下ろした槌で横になぎ払われたのだ。
「い・・・ってぇ・・・」
立ち上がろうとしたカイツは、全身に走る激痛に顔を歪ませた。どこかしら骨に損傷を受けたのかもしれない。
壁に頭を打ち付けたせいか、意識ももうろうとしてきた。
だが、そんなことにはお構い無しに、眼前の危機は彼に向かい近づいてくる。
無理矢理押し殺していた恐怖が、再び姿を現し始めた。
これでは・・・あの時と同じだ。
立ち上がることすらままならず、ただ震えることしかできなかったあの日と。

あの日から、自分を助けてくれたクルセイダーに憧れ、彼を目指して努力を重ねてきた。
何度も挫折しそうになりながらも、乗り越えてきた。
目標だったクルセイダーになり、騎士団にも入団できた。
そして、守りたいものもできた。
もう、あの日の弱い自分ではない。
いや、例えまだ弱かろうとも、今は立たねばならない。
まだあの日の自分から成長できていないのなら、正に今、変わらなくてはならない。

彼女を――シェリーを守らなくてはならない。

カイツはもう一度歯を食いしばり、ヨロヨロと立ち上がった。
落ちた剣を握りなおすと、構えた。
これが最後のチャンスだ。これで倒すことができなければ、もう戦う力は残っていない。
彼は再び、ミノタウロスへと向かっていった。
ミノタウロスは先ほどの一撃と同じように、槌を振り上げると、それを力任せに叩きつける。
カイツはそれを横にかわすと、今度は一気に攻撃には移らずに自分のマントに手をかけた。
そしてそれを、びりり、と引きちぎり、ミノタウロスの頭に覆い被せた。
頭全てを隠すにはそれは小さすぎたが、視界を遮り、一瞬でも動きを止めるのには十分だった。
地面に叩きつけられた槌を踏み台にして跳躍すると、両手で剣を振り上げた。

「うぉぉおぉおおおぁぁああぁぁあぁああぁぁぁ!!!」

雄叫びとともに、マントで覆われたその頭部に、剣が突き立てられた。

「ブオオォォォォォォォォォ!!」
ミノタウロスの苦痛の叫びが辺り一面に響いた。
剣を突き刺したカイツは、ミノタウロスの手で弾き飛ばされ、地面へと叩きつけられた。倒れたまま、もはや立つことも困難だった。
だが、それでも相手から視線は外さない。満身創痍になりながらも、その目の強い意志は消えてはいなかった。
視線の先では、急所に決定的な一撃を受けた巨大な体が、もだえ苦しんでいる。そこに、ひたひたと死が近づいてきているのが見て取れた。
やがて、迫り来る死に全てを取り込まれた肉体は、「ずぅん」と地響きを響かせて地面に倒れ付し、そして、そのまま動かなくなった。

その頭部に被せられたマントは、染み出す血で、真紅に染まっていた。

少し離れた所に倒れていたカイツは、ミノタウロスが絶命したのを確認すると、体の向きを変えた。
宿敵への勝利だったが、彼には凱歌を上げている時間は無い。
一刻も早く、シェリーの安否を確認しなければならない。
負傷しているなら、なおさら急がなくてはならない。
騎士団ヘと連れて行けば、おそらくそこで支援部隊が怪我人の手当てをしているだろう。
支援部隊には、一流の回復魔法の使い手たちがいる。彼等に任せれば、まず間違いは無いはずだ。
早く・・・!早く・・・!!
だが、その意思に反して、彼の意識はどんどんおぼろげになっていく。
全身の痛みさえも、まるで神経から切り離されていくように感じなくなっていた。
それでも、シェリーの倒れている所へと、ズルズルと体を引きずっていく。
「お、俺・・が・・・守る・・・んだ・・・」
少しずつ縮んでいくシェリーへの距離とは反比例して、彼の意識は遠のいていく。だが、なんとか彼女の元へとたどり着いた。
彼女の額には血が一筋流れていたが、微かながら呼吸している。
まだ大丈夫だ・・・!
すぐに手当てをすれば・・・っ
彼は、彼女をかばうようにして抱き寄せた。
「ごめ・・・な・・・別に・・・いやら・・しい・・・気持ち・・ないんだ・・ぜ・・・?」
引きつった笑顔で呟いた。
遠くからは、モンスターの雄叫び、人々の悲鳴や、怒号が聞こえてくる。だが、それも彼の耳には届かなくなった。
そして、その目に映る彼女の姿さえも霞んでいき、やがて、彼の意識は深く暗い闇の中へと引きずり込まれていった。









その日首都プロンテラを襲った未曽有の事件は、多くの犠牲を生み、幕を閉じた。











開け放たれた窓からは、爽やかな風が吹き込んでいる。
その風は、花の香りを青年の元へと運んだ。
鼻を撫でる柔らかな香りで、青年は目を覚ました。
見慣れた天井。
首を横に向ければ、見慣れた部屋。
そして窓際には、美しく飾り付けられた色とりどりの花々。
彼はゆっくりと体を起こした。
(ここは・・・俺の部屋か・・・)
まだハッキリとしない意識で、ぼんやりと考える。
何気なく頭に手をやると、そこには包帯が巻かれている。
疑問に思ってよく見ると、体のあちらこちらに、包帯やら絆創膏やらが貼ってあった。
どうやらかなりの怪我を負っているようだが・・・。
しかし、なぜこんな大怪我を負っているのか。
当てもなくぼーっと考えていると、ふと窓際の花が目に入った。
それは、かつて彼の部屋にあった花ではない。
彼の部屋にあった花は、種類はバラバラで、飾りつけも決してセンスの良いものではなかったが、彼にとってはこの世で最も美しく、そして、最も愛しい人から渡された――

「そうだ・・・シェリー・・・!!」

彼は布団を跳ね除けると、ベッドから飛び降りた。
そして、寝巻きのまま家の外へ出ると、走り出した。
あちらこちらが破壊され、人々が修復作業を行っている街の中を通り抜け、あの場所を目指して駆けていく。
ゼイゼイと息は途切れ、体中を痛みが包んでいたが、構うことなく走り続けた。
そして、大通りを抜け、建物の角を曲がり、その場所へ辿り着いた。

しかし、そこには誰もいない。

無人の空間を見つめたたまま、少しの時間が流れた。
ここでようやく、彼は冷静になった。
今日は何日だ?
あの事件からどれくらいの日数が経ったのか?
なぜ自分の部屋で寝ていたのか?
ミノタウロスとの戦闘の後、自分はどうなったのか?
そして、彼女は?シェリーは助かったのか?
冷静になればなるほど、彼の頭の中は混乱していく。

しばらく考えた末、自分一人では解決しないことを悟ると、彼は来た時とは対照的に、トボトボと家へと歩いて行った。
入り口の扉を開けると、そこにはオロオロと落ち着きなく部屋の中を歩き回る母親がいた。
扉を開けて入って来た彼の姿を見ると、彼女は喜びとも怒りとも取れる声で彼の名を叫んだ。
「カイツ!どこに行ってたんだい!」
彼女はカイツに抱きついた。
「よかった・・・ようやく目を覚ましてくれたんだね・・・よかった・・・」
母親は感極まった様子だが、カイツの方は顔を歪ませている。
「いてててて!ちょ、離せって・・・イデデ!!」
それを聞き、彼女は慌ててカイツから離れた。
ため息交じりに「ったく」と小さく呟くと、彼は母親に尋ねた。
「なぁ、俺、どうなったんだ?モンスターと戦って、それから気を失って・・・その後、どうなったんだ?」
その問いに、母親は事の経緯を説明し始めた。

先日のモンスターのプロンテラ襲撃事件の際、南大通りの裏で倒れていた彼と一人の少女を騎士団の騎士が発見し、騎士団の支援部隊の元へと担ぎこんでくれたらしい。
その後、連絡を受けた母親が彼を迎えに行き、家に連れ帰ってきたが、ずっと目を覚まさなかったために心配で夜も眠れなかったのだそうだ。
話によれば、かれこれ二週間も眠り続けていたようだ。
シェリーについては詳しくは聞いていないらしく、わからないという。
「そうか・・・」
彼は、重い声で返事をした。
そして、もう一つ、彼女に尋ねた。

「俺の部屋に飾ってた花・・・あれどうしたんだ?」
すると母親は自慢げに答えた。
「ああ、あれかい?花瓶に入ってた花が全部枯れてたからねぇ。新しく買って来たんだよ。どうだい、綺麗だろ?」
その言葉に彼は飛びついた。
「買ったってどこで!?誰から!?」
彼の剣幕に驚きつつも、母親は答えた。
しかしその答えは、彼の求めていた答えではなかった。


それから、さらに二ヶ月の月日が流れた。
その間、彼は毎日「あの場所」へと訪れたが、そこに捜し求める人の姿を見ることは一度もなかった。

そして、体の傷も癒えた彼は騎士団へと復帰した。
あの日以来初めて訪れた騎士団の宿舎内には、あちこちに十字架が掲げられていた。
あの事件で、多くの騎士たちが命を賭して戦い、散っていったのだ。
それは、彼の所属する第四師団も同じだった。
国王の護衛に向かった先で戦闘となり、半数以上が命を落としたのだそうだ。
彼の胸にそれまでにも存在していた罪悪感が、更に大きなものとなった。
騎士団において、命令違反は重罪だ。まして、国王の護衛という最上級重要度の任務を放棄したのだ。通常なら騎士団永久追放、下手をするなら極刑すらもありえる。
しかし、彼のへの処罰は意外なものだった。

――騎士団からの一時降格。

それが彼へ告げられた裁きだった。
本来なら騎士団追放だったが、今回の事件により騎士団員が不足していることと、大怪我を負いながらも少女を救おうとしたことが評価されたようだ。
どうやら、師団長の尽力もあったらしい。
そうして彼は、一時的にクルセイダーとしての地位を剥奪され、当分の間、見張り兵として騎士団に所属することとなった。

しかし、彼の心は晴れなかった。
少女一人すらろくに守る事のできない人間が、騎士団にいていいのだろうか。
あの時、自分がもっと強ければ、ミノタウロス程度軽く倒せる力があれば・・・。
そう思うと、あれだけ憧れていた騎士というものが、とても憂鬱なものに思えてくる。
はぁ・・・とため息をつくと、彼は座り込んだ。

街の南門に配備された彼は、時折訪れる冒険者に街の案内などをしながら、通りを眺めていた。
モンスターにより破壊された町並みも、少しずつ以前の活気を取り戻しつつある。
ただ一人、彼を残し、街は元の景色を取り戻しつつあった。

と、その時、座り込んでため息をついている彼のところへ人影が落ちた。
また冒険者か・・・?などと考えながらその人物の顔を見た彼の顔が、一気に強張った。
「し、師団長・・・」
彼は、しゃん!と背筋を伸ばし姿勢を直す。
「い、異常はありません!」
と慌てて体裁を繕うが、後の祭りである。
「カイツ・・・見張り番がだらしなく座り込むとは何事か!」
怒鳴り声と共に、彼の頭に鉄拳が振り下ろされた。
その痛みときたら凄まじく、ミノタウロスの槌より痛いんじゃないか?などと思うほどだ。殴られた頭をさすりながら、カイツは師団長へと目を向けた。

その時、カイツはあるものに気がついた。
彼の心臓が、どくん、と鳴った。

「あ、あの・・・師団長」
彼はおずおずと尋ねた。
「ん?どうした?まだ殴られ足りないか?」
などと、冗談じみた返事をする師団長の手には、あるものが握られていた。
「その手にある物・・・どうなされたんですか?」
高鳴る鼓動を抑えながら、彼は努めて平静に装った。
「あぁ、さっき買ったんだ。」
それを聞き、カイツの心臓の鼓動はどんどん大きなものになっていく。
「ど、どこで!?だ、誰から買われたんですか!?」
もはやそこに平静という言葉はなかった。
そんな彼の心境を知ってか知らずか、師団長は冗談っぽく答えた。
「そこの路地の先の広場さ。買うつもりはなかったんだが、売ってる娘があんまり可愛かったものでな・・・」
と、師団長が答え終わる前に、彼はその場を駆け出していた。
かぶっていた軍帽が地面に落ちたが、構わず走った。
その突然の行動を見た師団長が声を張り上げた。
「おい!どこに行くんだ!見張りはどうした!!」
しかし、走り行く彼からは
「すいません!宿舎掃除一ヶ月毎日やります!!!」
という返事が返ってきただけで、彼は振り返る事もなく走り去った。
その後姿には、もはや迷いはなかった。
師団長は落ちている軍帽を拾い上げると
「やれやれ・・・世話の焼ける奴だ」
そう呟き、その背中を見送った。


その時、青年が走り去った方角から吹いた風が、男の手に咲き誇った花の体を揺らした。



その風は、暖かく、優しく、そしてほのかに花の香りを乗せ、街の中を通り抜けていった。











ひどくささやかな、それだけの話――。








                             "blowin'" closed.






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別窓 グダグダ小説 コメント:5 top↑
<<久々にグダグダ日記。ぜんらで。 +10頭巾 あけおめことよろなんて言って騒いでる輩は箪笥の角に小指b(ry>>
コメント
うぇ、ら~ぽww全部読んじゃったww
(*´Д`)カイツかっこいいよぉ~~
(*´Д`)花売りシェリーかわいいよ~~

箪笥さんもカイツぐらいかっこよかったら・・・・・・

Σ(・д・)

かっこいい箪笥が脳内で思いつきません(≡ν≡;)
2007-02-08 18:47 | URL | ぷせる #- 内容変更 top↑
(´゚ω゚)・:∴
マジ長くてびっくりした(´゚ω゚)・:∴

ぽりんの効果音がうけたぜ(*≧m≦*)
まぁ、おつかれ様っす☆ちゃんと最後まで読めたよ(・∀・)www

ぷせるどん
ホワイト君のかっこいい姿想像できないに同意だ☆wつか、かっこいいホワイト…想像するときめぇ(´д`)www
2007-02-08 23:50 | URL | あんみ #2ykNyDH. 内容変更 top↑
ええ話や~(>_<)b
カイツかっこよすぎる(☆_☆)
シェリーかわええな~(☆_☆)

最後まで一気に読んじゃったよ゚(゚`∀´)゚。


箪笥もこのくらいかっこよければねぇ・・・・・








まぁ










それはありえないかな・・・・・(つД`)
2007-02-10 08:50 | URL | しいねちゃん #- 内容変更 top↑
ちょWww
師団長かっこいい(*゚д゚)キュンッ…

Wさんも師団長みたいにかっこよく……




……は、むりかな。
次はでこプリとでこBSの涙ありわらいありなラブ・ストーリーでよろ!で、養子が出るとより皆さん食い付くと思います。
普通にお話書くのがうまくてさらっとよめて楽しかったです(ノ)゚ω゚(ヾ)むいむい
次回作を期待しとります。
2007-02-11 03:31 | URL | まんそん #- 内容変更 top↑
>ぷせるさん
  ありがとうございます(´∀`)
  登場人物気に入ってもらえたようで何よりです。

>あんみさん
  (´゚ω゚).;・:自分でもこんなに長くする予定ではなかったんだけどね・・・。
  ぽよんぽよん(ノ)゚ω゚(ヾ)

>しいねちゃん
  服用中に体に異常が出なくて一安心デスヨー(´∀`)

>まんそんさん
  ここで師団長のかっこよさに気づいてくれるなんて、さすがまんそんさん!
  師団長にはホワイトのいぶし銀論を盛り込んでみました故、気に入ってもらえるとうれしいッスねー(´ω`)
  つか、でこプリでこBSっすか(´゚ω゚).;・:


(#゚Д゚)ていうか君ら四人、ちょっとそこ座れ。
2007-02-15 02:06 | URL | ホワイト・ライアット #5h.aGyeY 内容変更 top↑
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